今回で3話目となる実家への帰省記です。
今夏の帰省は実家の両親に会う事はもちろん、主人が好きだった思い出の場所を子供たちと巡り、主人の友人の方々と再会する事も大事な目的でした。
息子にとっては8年ぶり、私と娘にとっては4年振りの帰省。
さぁ、ミッション完遂なるか!
帰省記③は羽田到着後から始まります。
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久々の帰省。
去年の春に主人が急に逝ってしまった後、秋口に一度帰ろうと思っていた。
あの頃はまだコロナワクチンの接種証明が必要で、日本の国際線発着便数も依然として少なく、ようやく見つけた台湾経由の航空券を買ったものの、出発前にキャンセルになってしまい帰れなくなった経緯があった。
羽田に着陸した飛行機の中で子供達の嬉しそうな顔を見て思った。
もし去年帰れていたとしても、こんな表情はしなかっただろうな、と。
あの頃はまだ迫りくる寂しさと悲しさに、みんな抗う術も無くただただ俯いて堪える事しかできなかったから。
笑顔で帰省できる今で良かった、と思った。
ただ、国際線の便数が回復してきていた今年も観光客が押し寄せているせいか、航空券の値段はコロナ禍前の倍。それでも待ってくれている両親に会いに子供達と帰りたかった。去年の秋、私たちの帰省に合わせて、車椅子の息子のためにトイレも直してくれていたし、両親共に高齢で健康が万全とは言えない。だから、「今年こそは!」、と早くから少しでも安いチケットを見つけるべく色々探していたが、割安なチケットだと直行便が使えないのが悩ましい。自身の車椅子を使うとは言え、飛行機に乗り込む際には少なくとも2度の移乗が必要になる。降りる時も2度。これが乗り継ぎが増える度に4回ずつ多くなりその分息子の体力は消耗する。でも、うだうだ考えていては値段は上がるばかり。
色々相談した結果、やはり一人当たり300€でも安くなるなら、乗り継ぎがあっても頑張ると言う息子に背中を押され、少し不安ではあったが、行きは2度の乗り継ぎ、帰りは3度の乗り継ぎが必要となるチケットを購入した。
…という訳で、羽田到着は喜ばしい。が、まだ安心できない。
あと6回の移乗をクリアしないと最初の目的地にはたどり着けない…。
介助が必要となる乗客が飛行機を降りるのは最後。他のお客さんが皆降りてガランとなった機内。暫くすると、機内用の車椅子を押した方がやってきた。ここでドキッとしたのがこの方の可愛らしさ。
イヤ、可愛らしさと言っても遠目ではまだお顔はハッキリ見えなかった。じゃぁ、何が可愛らしかったって、それは体格…。
フランスでは屈強な男性2名での介助だった。あー、あの筋肉になら任せてもいいワ、という変な安心感があった。だが、この時現れたのは息子の3分の1、私の2分の1あろうかというサイズの可憐な女性だったのだ。他人を見かけで判断するのは良くない。この方も介助のプロだったのかもしれない。或いはあの細腕に大変な力を隠し持っていらしたかもしれない。でも、彼女を見て反射的に、大きな息子の移乗を無事に介助できるだろうか、と不安がよぎった。
フランスでは私の事など見向きもせずにエイヤっと腕力に物を言わせて移乗させてくれる介助の方に任せっきりだった私も、この時「ここは私が頑張らねば」とスイッチが入った。座席から機内用車椅子へ。そして機内用車椅子から自分の車椅子へ。二度の移乗を私主導で介助して、「やはり母がいなくちゃ」と鼻息荒めに、無事に荷物受取所へと向かった。
大きなスーツケースをコンベイヤーから下ろし、不要なスーツケースを実家へ送るため宅配便のサービスカウンターへ走り、日本国内で使えるSIMを入手に走り、見つけてしまったどう見ても美味しいに違いないどら焼きを買って、乗り継ぎの便の搭乗口へと向かった。この間、先ほどの可憐な介助の方がずっと息子の車椅子を押して下さっていたので、さすがに多少くたびれてはいたが、ここまでは大丈夫だった。
搭乗口に着くと、「搭乗時間の前に別の担当者が機内までご案内します」、と言って、そこまでお世話になった方は立ち去った。搭乗口はすでに多くの乗客で込み合っており、座る場所は無く、出発が遅れた事もあり立ちんぼのまま40~50分程待ったろうか。
そろそろかな、と思った所へ機内用の車椅子を押して来て下さったのは男性。
しかし、しかしだ。彼も素敵にスリムな男性。私より背は高いが、見た感じ私の方が体重も力もありそうな雰囲気。で、ここでも私の出番だとばかり、手を出したしたその瞬間…。
ピッキィッーン!
腰に鋭い痛みが走った!
「あた、たたた…」
実は私、過去に何度かぎっくり腰をやっていまして、あまり腰が強くない。
おそらく、自覚していたより大分疲れていたのでしょう。13時間半のフライトの後ですし、体も固まっていたのでしょう。それに加え、少し前の移乗とスーツケースの上げ下げで腰にかなりの負担がかかっていて限界状態だったのかもしれません。
…とにかく、運動不足の若くないポッチャリさんは、どんな状況下でも深く考えず重い物を持ち上げるのはNG。
まだ最初の目的地には距離も時間もあるのに、ここで動けなくなったら、と思うと青ざめました…。
そんな私を見て、「だ、大丈夫ですか!」、と介助の方にも心配をかける始末。
結局、私などいなくても、息子の移乗はもう2人のスタッフの方が駆けつけて下さって無事できました。
「ヤバイ、ヤバイ」、とそっと腰痛和らげストレッチをしていると、息子に
「ママが動けなくなったら、どうするの!もう皆に任せてママは手を出さないで!」、と叱られた。
そう、その通り。1カ月半の長旅。私が動けなくなっては旅行が台無し。任せられる所は思い切って任せるのが大事なのです。
反省していると、スクッと立ち上がったのは娘でした。
「ママ、カバンかして!」
機内持ち込みの荷物は3点。リュックとバッグと小型スーツケース。それまでは手分けして運んでいましたが、私の腰を心配した娘が、ここから富山まで私に荷物を触らせませんでした。
この日、娘は「優しい子」から「優しく逞しい子」へと進化しました。
可愛い子には、腰の弱い親と旅をさせろ。
腰に爆弾を抱えながら神戸空港に降り立ったのはすでに夜10時すぎ。
でも、ありがたい事に、手配していたタクシーはちゃんと空港前で待っていてくれました!MKタクシーありがとう!時間も約束もちゃんと守ってくれる日本人ありがとう!
こうして、無事ホテルにチェックインを果たしました。
翌日は娘が楽しみにしているユニバーサルスタジオ…。
絶叫マシンと、腰痛に疲労を抱えた高年の入り口に立つ母親の相性はいかに…。
今回クリアしたマス目:
⑤不要なスーツケースを宅配で送り、日本国内用SIM購入。
(腰を軽く痛めて荷物方一人失う⇒一回休み)
⑥飛行機の乗り継ぎ
⑦空港到着、タクシー乗車
⑧ホテル到着
We could never learn to be brave and patient, if there were only joy in the world.
世の中が楽しい事ばかりで溢れていたら、誰も勇敢さや我慢強さを学べやしないでしょ。
ーHelen Keller