手持ち無沙汰な時、温かいお茶のお供にでもして頂ければ、うれしいです。

2年

大切な家族を亡くして早二年。

あの日は朝から冷たい雨が降っていた。

彼はよく「僕は雨を呼べる。」と言っていた。

だから、きっとさよならを言っているんだなと思った。

 

桜の開花の知らせを聞くこの季節。

薄暗く寒い日々が過ぎて、花も鳥も虫も一気に目覚めるこの季節。

外は明るく花々に彩られた景色は広がるけれど、彼を思って寂しさが募る。

 

一緒に歩いた道。交わした会話。つないだ手の温もり。笑顔。

夢の中で会う彼はようやく元気な頃の姿を取り戻してきた。この間などは電子辞書が見つからないと探していたから、向こうの世界でも変わらずに好きな勉強を続けているのだと思って慰められた。

 

庭に出て、目を空に向けると、ポツリポツリと雨が落ちた。

今朝の雨はあの日の様に冷たくなくて、涙がこぼれた。