手持ち無沙汰な時、温かいお茶のお供にでもして頂ければ、うれしいです。

虹の後の嵐

主人の命日の夕食時。

彼がいつも座っていた席に少しワインを注いだグラスを置き、子供達と彼との思い出話に花を咲かせていると、外でゴロゴロと雷が鳴りだした。

 

雨を呼べるという彼の自慢話をよく聞かされていた私たちは納得顔で、

「あ~来た来た。パパだねぇ。」と冗談気味にうなずき合っていると、庭に面した窓から見える空がピカッと光った。

「お~!」と皆で歓声を上げると、娘が写真を撮ると携帯を引っ掴み、小走りで玄関に向かった。空は嵐の前の装いで少しオレンジ色がかっていたけれど、ピカッからゴロゴロまでの時間はまだ長くて雷が落ちる心配はないと判断し、私も娘の後に続いて庭に出た。すでに大粒の雨がポタポタと落ち始めていた。見ると東の空にうっすらと虹が掛かっていた。

「あっ、虹!」と娘に指差しで知らせると、

「ほんとだ!」と少々上ずり気味の声を出して早速写真を撮り始めた。

嬉しくなって『ありがとうね。』と心の中で言ったそばから虹の橋がぐんぐん伸び始めて綺麗な半円を描いた。

 

ハワイでは毎日の様に見ていた虹だが、フランスへ来てからは殆ど巡り合う事のなかった虹だ。

消えてしまう前にと、息子の車椅子を押して3人で一緒に虹を眺めて

「お~、パパさすがだね~。」と褒めていると、いよいよ雨足が強まり始めた。

家に入って数分後には盛大な雷と共に大雨になった。

電気が少し瞬いた。三人でニヤニヤしながら、またうなずき合った。

 

彼のいない3年目が始まった朝は悲しく寂しかったけれど、夕刻の盛大なショーのお陰で私も子供達も、彼の変わらぬ愛情が感じられたいい日になった。

 

向こうの世界ではそれほど自由が効くものなのか、それともその都度神様にお願いするのか、とふと考え、私達のためにと神様に頼み込んでいる姿が思い浮かんでおかしかった。

 

ありがとう。