中古で買った家。私とほぼ同い年である事は以前書いた。
色々ガタがきています。特に水回り。人間でいえば胃腸あたりか…。
半世紀も生きてくると、暴飲暴食はできなくなるもんね。
つい数か月前に盛大に水漏れし修理したばかりだが、ここへ来てまた別の所から水漏れ。ポトリポトリと車庫の天井から雫が落ちていた。
少々うんざり気味に、配管工の方を呼んで見てもらったところ
「いやぁ、見える所からの水漏れはないねぇ。こりゃ、壁の中だな。」との事。
頭の中で大工事の様子が再生されゾッとした。
「手あたり次第壁壊すわけにもいかないから、まずは保険屋に連絡する事だね。」
そう言って配管工さんは帰って行った。
保険屋…。電話…。フランス語…。
『できるだろうか…。』
トラブル時に自分を信じられない心許なさよ。
ここぞとばかりに真っ先にご近所さんにSOSの電話を掛けたが、残念ながら応答なし。
チッ…。
車庫の天井から滴り続ける水をもう一度見上げて、待つ余裕はない事を再確認し、意を決して保険屋さんの電話番号を回した(←昭和か!)。
「もしもし…あのぉ、車庫の天井から水漏れしてるんですが。」
「〇x&%*の報告ですか?」
最初の一言から分からなかった。焦って冷や汗が滲む。
「えっと…配管工さんに見てもらったんですが…、あのぉ、原因は壁の中だろうって言われまして…。保険会社に電話して下さいって。」
「〇x&%*ですね。担当に繋ぎますのでそのままお待ちください。」
ポップな音楽に切り替わって待たされている間、保険の填補範囲を確認していると「dégâts」の文字が目に入った。
瞬時に閃いた。
「あー、これ!そっか、さっきの『被害の報告ですか』、って聞かれたんだ!」
おかげで、担当者が電話に出た時には、涼しい声で
「あの水漏れの『被害』を報告したいんですが…。」という事ができた。
二度目とあって『被害』の状況説明も流暢にできた。
これが先月20日の事。
そして数日後保険屋さんが派遣してくれた水漏れ発見調査員が原因を突き止め、報告書にまとめてくれて、配管工さんに臨時の修理をしてもらった。そして昨日、ようやく本工事が始まった。
1カ月…。短かいととるか、長いととるか、これは国民性、文化圏、そして人格によっても左右される。
が、この1カ月、私の、保険屋さんと配管工さんと水漏れ発見調査員さんとの間で交わされるフランス語は、著しく上達した。
外国語の一番の先生、それはトラブル対処。
そしてそのトラブルは大きいほど効果がある事が経験から証明されている事をここに記しておく。