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ガロ・ローマン遺跡

人は自分の生きている今の事さえよく分からない。

人一人が生きる場所や時間は限られていて、世界で何が起こっているかをニュースで知る事はあっても、理解する事は難しい。

 

ましてや何千年も前に起きた事を事実として教えられても、それはどこか現実味を欠いていておとぎ話か何かの様。

 

でも、美術館や博物館、遺跡などを見る機会があると大昔に確かに生きた人の息遣いを感じて不思議な気分になる。そこには、自分なんかよりもはるかに才能に溢れ優れた技術を持つ人々が、与えられた役割をこなしながら日々暮らしていた跡がある。

 

我が家から車で30分弱の場所にガロ・ローマン時代の遺跡がある事は前から知っていて、一度行きたいと思っていた。

でも、もともと出不精な質なので、また今度、また今度、と幾度となく先延ばしにしていた。で、昨日、ジャポニカ米を買いに行くついでに少し足を延ばそうと、重い腰をエイヤッ、と上げた。

 

広ーい畑の中にポツリポツリと農家の屋根が見える中を延々と走り、ようやくたどり着いてみると…、閉まっていた。

 

チッ。

 

門の前には去年の夏休み中の開園スケジュールが貼りだされていて、それも土日のみ…。これをホームページに載せてほしかった…。ネットでは、屋外の遺跡で入場無料、駐車場あり、との情報と共に写真が載せられていて、てっきり一般に開放されているのだろうと思っていた。それに今は冬休み。休みの期間に見に来て貰わないと、いつ人に来て貰うんだ、と思うが、ここはフランス。仕方がない。

 

でも、せっかく来たのだから少しぐらい見られないか、と正面の生垣の角を曲がるとそこはワイヤーフェンスで透け透けだった。残念ながら近くに寄る事はできないけれど、それほど大きくない遺跡を遠巻きに見られた。

 

何でもカエサルガリア戦でフランスを征服したあとに建てられたローマ式の建造物の一つで、この遺跡はこの地域の守護神だったガリアのヒーリングの女神、セジェスタに捧げられた神聖な場所だったらしい。ローマ帝国の道路地図、タブラ・ペウテインゲリアナにもAquis Segeteの名前で記載されていると言うのだから要所だった事が分かる。整備された遺跡の中央には病に効くという温泉水の取り込む水場があって、そこを囲むように立ち並んでいた巡礼者のための店の跡も見られた。小さなお守りの様な物も発掘された様で、飲食店の他、お土産屋さんなどがあったのだろうと言われている。まぁ、人が集まる場所では色々需要が生まれるから、そこは現代とあまり変わらないな、と思う。

 

資料館も閉まっていたので、細かい事は分からないが、周囲には広大な遺跡が眠っているらしく所々発掘途中の場所もあった…。どうやら新しく美術館を建てる予定らしいので、あと2,3年もすれば発掘も進んで名の知れた観光地になるかもしれない。

 

30分程歩き回って、フェンスの外に並べられた岩を台座に見立てて、そのうえで娘に女神セジェスタのポーズを取ってもらい記念撮影をして、ジャポニカ米を買って帰ってきた。