手持ち無沙汰な時、温かいお茶のお供にでもして頂ければ、うれしいです。

稲子

ジャポニカ米を切らしていた。

近隣のスーパーで購入可能な美味しいお米は高い。

 

インフレ前は1キロ2ユーロ前後だったのが、今は平気で4ユーロ以上する。

もっと安価なお米もあるけれど、浸水時間を増やしても、水の量を調節してもパラパラポソポソでチャーハンやピラフなどにすればいいけれど、水で炊いただけの状態では正直美味しくない。

 

ただ、時間さえ使えば選択肢が無いわけではない。

少し遠いが、ジャポニカ米をまだ3ユーロで売っているスーパーが一軒あるのである。それもどういう訳かこの辺では珍しいブランドも扱っているため、ジャポニカ米だけでも3,4種類ある。ただ、その他の物が割高なのでお米だけのためにそこまで足を延ばすのはいつも二の足を踏む。

 

だから、米びつの底が見え始めると色んな意味で心細くなる。

毎日食べなくてもいい。でも無いと献立を考える時のテンションが下がる。

若くして日本を離れたとは言え、遺伝子は日本米を主食としてプログラムなされている様で、白いご飯が無いと今一つ身体も心も調子が上がらない。

 

お米がある時にゆでるジャガイモやパスタは自由意志であり嬉しいバリエーション。

でも、お米が無い時のそれは「やむを得ず」の選択肢。

 

そして3日もご飯が食べられない日が続くと、何か口に入れる度にお米の事を考える様になる。5日も経つと、白いご飯と一緒に食べたいおかずまでアレコレ想像が及ぶようになり、ハッと気が付くと、仕事の手は止まり、口の中には唾が溜まる。

禁断症状だ。

 

というわけで、我慢限界となった昨日、お米を買いに出かけた。

そして真っ先にアジアセクションに行くと、衝動を抑えきれずに棚に出してあった6袋全買いした。3人家族で6キロ。ちょっと買い過ぎたか…。

 

今回買ったのはイタリア産のジャポニカ米でその名も「Ineko」。

稲子を見かけるようになったのは1年半位前だろうか。

パッケージには、桜の下、和傘を差した着物姿の稲子が描かれている。

シルエットだけだけど、きっと両親自慢の田舎育ちの可愛らしい娘さんなのだろう。

 

ただ「米はおいしい寿司を作るために」のキャプションがちょっと不自然。

日本人の言葉ではないと思われる。

 

とすると稲子はやはりお米の産地のイタリア人か…。

いや、でも普段このお米でリゾットを食べているイタリア人が

わざわざ「おいしい寿司を作るために」と言うだろうか。

 

そうか!フランスのアジア系食品の輸入販売元のTang Frères陳氏兄弟ラオス出身だ。

産地がイタリアと言っても、イタリア人の主食はしょせん麦。

やはり、ここは同じアジアのお米をこよなく愛するラオス出身のTang兄弟の甥っ子さんあたりが、「ジャポニカ米と言えばお寿司用よね」、という事で考えた文言を日本風に着飾ったラオスの娘に言わせているという設定だ。

納得。

 

6日ぶりの白いご飯のお供には、色々考え、すき焼き風牛の煮込みをチョイス。

幸せな夕食だった事は言うまでもない。

大和人の私も、5割大和人で麦も米もジャガイモも同じ位好きな子供たちも、大満足だった。

 

ありがとう、イタリア。ありがとう、ラオス。ありがとう、稲子。