手持ち無沙汰な時、温かいお茶のお供にでもして頂ければ、うれしいです。

213g

先日213gの封書を郵送した。

コピー用紙が一枚4gとすると何と53枚分だ。

送ったのは本でもなく、冊子でもない。

自宅のプリンターで1ページずつ印刷した紛れもない紙たち。

このデジタル時代に一度に50枚以上もの紙を送っている人間がどれだけいるだろう。

 

これが時々っていうならまだしも、私はここ数カ月間、ほぼ毎月同じ位の量の紙を違う宛先へと送り続けている。

 

中身はと言えば、色々な所から提出を求めらる書類である。そして求められる書類の中にはもう以前に何度も送った出生証明書やパスポートのコピー等も含まれる…。

 

9年前にフランスに越してきた時、どんどん増える「保管しておいて下さい」と言われた紙の束に驚いた。銀行、各種保険、携帯電話、電気、水道…と新規で契約する度に律義にファイルしていたら、あっという間に本棚が一杯になった。

そして契約時にはいつも会社側と個人側分の二つのコピーに署名する事を思い、会社側もその紙を保管しているのを想像する…。何万人という契約者との契約書が保管されている光景を。

 

いったいどこに?そして誰が管理しているんだろう。

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薄暗い地下室、天井まで届く棚の列列列。

日々搬入される大量の紙。黙々と仕分けする人々。

搬入される量に比べて、極端に少ない廃棄される量。

「そろそろここも一杯ですね。新しい場所もう確保してるんでしょうか。」

「あー、心配ないよ。春には地下36~38階が使えるようになるらしいから。」

「さんじゅうろく…って、じゃここは…」

「D5-Z0だから、29階半だね。僕も最初聞いた時は驚いたよ。

最近のエレベーター、超高速だからね。」

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アメリカでは9年前の時点ですでにペーパーレスが進み郵便物と言えば寄付金を募る団体か、義母が使っていた通販のカタログ、そして時々紛れ込む年金通知位のものだった。合理的と判断するとシフトが早いアメリカ。

 

それに比べ、歴史ある国々は、伝統的なやり方でずっと何とかなってきた実績があるせいか、急激な変化には抵抗があるようだ。あーでもない、こーでもない、と言う人はいつでもいて、気が付くと地下36階だ。

 

もうすぐ春だというのに、そんなに深くに埋もれてどうする?