手持ち無沙汰な時、温かいお茶のお供にでもして頂ければ、うれしいです。

Spinraza(スピンラザ)による治療経過(SMA3型ー17歳)

息子がSpinraza(一般名ヌシネルセンナトリウム)による治療を始めたのは16歳になったばかりの去年の5月14日でした。

それから1年と2カ月。治療経過を記録しておきたいと思います。今後、治療を検討されている患者さんとご家族の皆様の参考になれば嬉しいです。

治療記録:

5月14日 負荷投与 1回目 成功!

5月29日 負荷投与 2回目 *キャンセル

6月12日 負荷投与 2回目 成功!

7月17日 負荷投与 3回目 成功!

*本来であれば4回受けなければいけない負荷投与は、2回目がキャンセルになったため、3回になりました。

11月19日 維持投与 1回目 成功!

  3月18日 維持投与 2回目 中止(コロナの影響でスキャナ使用できず)

  7月  8日 維持投与 2回目 成功!

上記の通り、予定よりも投与回数が2回少ない状況ですが、日本向けの投与方法を見ると乳児以外は負荷投与は3回、その後の維持投与は6カ月に1回となっているため、息子の治療を担当して下さっているお医者さんが言っていた「プロトコルの規定内で治療は進められている」というのは信頼できるのかな、とも思います。

 

そして肝心の効果ですが、はっきり言えるのは病気の目立った進行は抑えられているという事です。治療前は、徐々に筋力・体力共に衰え、今まで簡単にできていた事が難しくなっている印象でした。客観的な検査を行ったわけではないので、あくまで主観的な観察録になりますが、治療を始めてからは、日々の生活を見ている限りでは筋力に衰えは見られません!むしろ、手動の車いすから電動への移動や、車いすからベッドへの移動など、以前はかなりの介助を要していたのが、足腰に少し踏ん張りが効くようになったのか、こちらの負担が楽になった様に思われます。

 

そして、何よりも嬉しい変化は基礎体力と免疫力のアップです。治療前は2~3カ月に一度は必ずといっていいほど風邪を引き、その度に気管支炎をおこし、少なくとも1週間は辛い咳に悩まされていました。心配だったのは、風邪を拗らせて寝込むと運動量が著しく減るため、病気の進行に拍車がかかる様だった事。それに、せっかく合格した高校も1年目は病欠で出席数が足りず、留年せざるを得ませんでした(もちろん勉強嫌いも大きな要因ではありますが…)。

でも治療開始して、この1年、風邪を引く回数も減り、重症化する事もめったになくなったため、抗生物質が必要となったのはたった2回!それさえも、3、4日もあれば元気になるので、学校を長く休まずにすむようになりました。体力も持続するので、学校に長くいられるようになり、去年から科目を二つ増やすこともできました(歴史・地理とドイツ語)。授業中の集中力が増したのか、学習意欲が増したわけではないのに、成績も伸び、今年は問題なく進級を果たしました!

 

治療開始前は、期待が膨らみ「もしかすると以前のように立って歩く事ができるかもしれない」と大きく考えていましたが、残念ながら現時点でその兆しは未だ見えません。ただ、本人も私たち家族も、「前より元気になった」事だけでも、随分励まされています。今後、どこまで効果が表れるか分かりませんが、この状態を維持できるだけでも治療を続ける価値は十分あると思っています。

 

ここ数年で、SMAの治療薬の研究開発は目覚ましい成果をあげており、現在は2016年に承認されたSpinrazaに加え、昨年米国で承認された遺伝子治療薬Zolgensma/AVXS-101が日本でも承認され、治療のオプションが増え始めています。いずれの薬も、日本での投与対象はまだ乳幼児に限れているようですが、今後臨床研究が進めば対象範囲も広がっていくものと思われます。そして、米国では現在経口薬の治療薬Risdiplam(RG7916)も審査中で、早ければ今年の8月にも承認が期待されています。

 

www.pat.spinraza.jp

www.novartis.co.jp

www.chugai-pharm.co.jp

統計的にいって、10万人に1~2人の割合でSMAが発症します。一定の罹患数がある事は明白なので、やはり、将来的に早期治療開始=完治/未発症に繋げるためにも、新生児検査にSMA検査が組み込まれればいいなと思います。

 

日々、研究、開発、治療に従事していらっしゃる皆さんに感謝しつつ、

全ての患者さんが安心して治療を受けられる日が一日でも早く来るよう願っています。

 

患者さんとご家族の皆さんが、日々穏やかに過ごせますように。