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SMA治療法に関する発表内容~2018年AAN年次学会(米国神経学会)~

去る4月21日~27日、ロサンゼルスでAAN(米国神経学会)の年次学会が行われました。神経学に関る最新の研究成果や臨床試験の結果が発表されました。

これまで、このブログでもお伝えしてきたSMA(脊髄性筋萎縮症)のための新薬関連の結果や成果も多く発表された様ですので、簡単に発表内容をお知らせしたいと思います。

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⒈ 遺伝子治療 AVXS-101

まずはAveXis社開発のAVXS-101関連ですが、同社はこれまでSMA1型と2型の患者さんを対象にした臨床試験を行ってきましたが、今回、新たにSPR1NTと呼ばれる臨床試験フェーズ3が開始され、こちらの試験は3型の患者さんまで対象枠が広げられ、最初の被験者グループに薬が投与されたとの事です。このSPR1NTは、13か国で臨床試験が行われる予定で、日本も参加国の一つに挙げられています(臨床試験実施医療機関東京女子医科大学遺伝子医療センター;担当:齋藤加代子先生-

「自分の目の黒いうちに治したい」 斎藤加代子さん|WOMAN SMART|NIKKEI STYLE

また、AveXis社では、SPR1NTと並行して、SMA1型を患うの生後6カ月以内の乳児を対象にしたSTR1VEと呼ばれる臨床試験フェーズ3への被験者の登録、並びに2型の乳幼児(生後60カ月以内)を対象としたSTRONGでも被験者の募集も行っています。

 

SMA1型を患う子供達は、通常、平均、生後10.5カ月で人工呼吸管理などのライフサポートが必要となり、9割以上が生後20カ月以内に亡くなると言われます。STR1VEでは、AVXS-101よる一度の遺伝子治療の目標として、生後14カ月の時点で人工呼吸管理が不要、生後18カ月時点で支え無しで30秒以上独り座りができる事を掲げています。

 

今回の学会では、2014年5月から2017年12月までの期間行われたSTR1VE臨床試験フェーズ1の被験者の投薬後24か月検査結果も発表され、それによると被験者15名のSMA1型の子供達の全てが生存しており、常に人工呼吸器を必要とする子供は一人もいないとの事です。15名の内、高用量を投与された12名の子供達の中には30秒以上一人で座る以外にも、寝返りができるようになったり、歩く事ができるようになったりした子もいるとの事です(最年長の子供は生後46.2カ月)。治療後24カ月時点で12名中、11名が「30秒以上一人で座る」という目標を達成したと発表されました。また、AVXS-101の安全面についても、引き続き問題は見つかっていないとの事です。

 

⒉ 経口錠剤 RG7916(SMN2のスプライシングに働きかけ機能SMN蛋白を増やす)

今回の学会では、全てのRG7916の臨床試験(SMA1型乳児対象のFIREFISHーフェーズ2/3、SMA2型&3型対象のSUNFISH-フェーズ2/3&JEWELFISH-フェーズ2)において、投薬期間後、機能SMN蛋白の量が治療前と比較して、最高で6.5倍まで増えた事が発表されました。

以前もお伝えしたようにSUNFISHの臨床試験は日本でも実施予定で、福岡市立こども病院、兵庫医科大学病院、広島大学病院国立国際医療研究センターではすでに募集が開始されています。

 

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脊髄注射 Spinraza(SMN2のスプライシングに働きかけ機能SMN蛋白を増やす)

SMAの治療薬として唯一承認されたSpinrazaの臨床試験フェーズ3の途中結果が発表されました。SHINEと呼ばれるSMA1型の乳幼児を対象とした臨床試験では、全ての被験者に運動能力と呼吸機能の向上が見られているとの事です。また、SMA2型、3型の患者さん(年齢幅:2~15才)では、数回の投薬後に6分間歩行テスト(6MWT)が行われ、治療前に比べ中央値で98メートル歩行距離が伸びたと報告されました。薬の安全性についても、新たな問題は見つかっていない様です。

スピンラザの治療についての詳細は以下のサイトに説明があります。

https://www.pat.spinraza.jp/content/dam/commercial-jp/specialty/spinraza/pat/ja-jp/pdf/it_guide.pdf

 

日々研究開発に勤しんで下さっている皆様に感謝しつつ、

早く患者さん全てに治療がいきわたる日が来るよう祈りながら、

今日も一日大切に生きたいと思います。