人の不幸ほど美味しいモノはない?
そんなダークな趣味を持ち合わせている人はそれほどいないとは思いますが、困難な状況でもへこたれず、頑張っている人を見ると勇気づけられ、自分の悩みや抱える問題が小さく見えて気持ちが軽くなる人は一定数いるはずです。
そこで今日は、我が家の抱える問題を赤裸々に。
我が家が目下直面している問題は、命が危険に晒されている訳ではないので、最大の危機とは言えません。でも、これまで平穏な暮らしに慣れていた私たち家族にとっては、大きな試練に遭遇していると言っても過言ではありません。
脊髄性筋萎縮症を患う息子のため、3年程前からバストイレのリフォームに向けて少しずつ準備を進めてきたのですが、今年に入って県から補助が受けられる事になり、3月半ば思い切って改装工事に踏み切りました。発注当初、2週間半で工事完了予定という話でしたが、工事開始がフランスで外出禁止令が出された時期と重なった事もあり、作業は解体作業後、目に見えて遅れ始めました。とは言え、ロックダウンで、緊急を要する運搬が優先されていたため、資材の発注や配送などが影響を受けている事も承知していたのでロックダウンの期間中は仕方ないものと諦めていました。しかし、作業開始から1か月、息子は簡易トイレで我慢し、シャワーに至っては2カ月間も浴びられず、キッチンのシンクで髪を洗い、体は拭く事しかできなかったため、本人が辛かったのはもちろん、私も見ていて居たたまれませんでした。
5月半ば、ようやくロックダウン解除となり、これで工事もどんどん進むかと思いきや、何度業者に催促しても、言い訳ばかりで、暖簾に腕押し状態。5月の作業日数は何と2日のみ。ようやくシャワーが設置されるも、排水に問題があり、2カ月ぶりのシャワーで、バストイレの床一面水浸しになり、また修理を待つはめに。
幸か不幸か、40数年生きてきて、これまで、悪徳業者に騙された経験がなかった私は、ちょっとおかしいなと思っても、疑う事に罪悪感を感じていました。でも、5月末、一向に進まない作業と作業の質の悪さを目の当たりにして、ようやく、「このままだと、この業者、現場放り出して消えるかも…」と危機感を覚えました。
言葉ができないと、必然的に弱い立場になります。だから、外国人などは小さな子供を相手にするようなもので、弱みにつけ込もうとすれば、いとも簡単にできてしまいます。でも、大抵の人は、言葉だけで相手を判断せず、私などにでもきちんと配慮し、ちゃんと対等に扱ってくれます。日本人であるという事も手伝ってか、或いは普通のフランス人よりも丁重な扱いを受けているかもしれません。おかげで、少し操れるようになったフランス語は、所詮「楽しいフランス語会話ー中級編」程度。苦情を述べたり、陳情したりする際には全く訳に立たないレベル。
しかし、家族のため、息子のため、私は甚だ心もとない「楽しいフランス語会話」を武器に、立ち上がる事を余儀なくされました…。
5月末、ご近所さんに相談して、方々にメールを書き、電話をかけ、助けを求め始めました。あれから1カ月半、自治体の法的調停人の援助を依頼し、何度か面談に出向き、期限内に作業を完了させるという合意書に業者の署名を取りつけました。万が一に備えて、裁判資料として認められる作業の進捗状況報告書の作成も依頼しました。その後、県の障害福祉部門にも仲介をお願いしました。
結果、工事が完了したかと言えば、まだ終わっていません…。
合意書内の期限はもう過ぎてしまったので、まだまだ安心はできません…。
それでも、排水管の修理は済み、息子はシャワーが浴びられるようになりました。
来週月曜日には工事完了に向けて「une équipe(チーム)」を派遣するとの事です。
…それから、この数週間で、「楽しいフランス語会話ー中級編」から「サバイバル フランス語会話-トラブル対処編」にレベルアップした事は間違いありません!
トラブルなんて無い事に越したことはありません。でも、長く生きてくると、時には避けられない事もあります。その度にパニクって、ストレスで胃も痛くなり、その割に体重は増え、白髪の増殖に拍車もかかりますが、「転んでもただでは起き上がらぬ!」の精神で明るい明日を信じて日々最善を尽くすのみです。
…と、あたかも一人で果敢に戦っている風に聞こえてしまうかもしれませんが、親身になって心配して下さるフランス人のご近所さんの存在が無ければ、二進も三進もいきませんでした。なので、とどのつまり、「迷惑をかけてでも誰かに助けを求める」勇気が、苦境を脱する一歩なのだと思います。解決への道筋が見えなければ、何をどうすればいいか分からず現状打開には繋がりませんもんね。
なので、今悩みを抱えている方、まずは誰かに相談してみてください。
心と時間に余裕のある人は案外少ないものなので、一人や二人に相談しても何も変わらないかもしれません。でも十人、二十人に相談できれば、何か有益な情報を得られる確率が大幅に上がると思います。(私から見れば、日本にいて日本語の心配がない時点で、絶対的に有利ですけどね!)
遠い空の下ではありますが、いっしょに、今日を切り抜けましょう!