手持ち無沙汰な時、温かいお茶のお供にでもして頂ければ、うれしいです。

我が家には主人の残した多くの蔵書がある。

それも色々な言語で書かれた専門書が大多数を占める。

彼が長年かけて集めた本たちには、読むことはできなくても、子供達も私も愛着があって、彼を感じられる大事な遺品だ。でも、彼が逝って2年半、これからの事を考えても、本の事を考えても、おそらくこれからも開かれる事のない本をずっと置いておくのは良くないと思い始めていた。

 

フランスにある数ある図書館への寄付も考えたが、きっと大量の本の置き場所や分類に要する人員など、簡単に受け入れる事はできない理由がある様で、数件に打診したけれど、最初の感触はいいもののいずれの図書館とも話は一向に進まない。必要ない本を押し付けるのは心苦しく、こちらも返答を強く催促できずにいた。

 

そんな中、数日前、生前彼と親交のあった方から連絡が入った。

現在の職場が主人の蔵書の行方を気に掛けている、と。

もし、まだ受け入れ先が決まっていないなら、是非ウチを検討してほしい、と。

 

フランス国内の図書館ではないので、運搬などの心配はあるけれど、

主人の大切な本を必要としてくれている人が、場所がある事が分かって嬉しかった。

 

日本の古本屋などで、専門書が二束三文で売られているのを見て、その本の所有者であった人に思いを馳せて複雑な気持ちになっていた。誰かの大切だった物も、残された人にとっては容易に何とか処分せねばならない物と化す。それでも、主人の様に日本に行く度に必ず神保町の古本屋を巡り、古本市があれば目を輝かせて段ボール一杯の本を買う人もいるのだから、それはそれで本にとって再生の道が開かれ、知識は循環するのだ、というのは分かってはいるけれど。

 

という訳で、受け入れ先の方々のため、途中で挫折していた蔵書録の作成を再開した。

昨日苦労してインプットしたのはこれ…。

ISBNコードを入力しても不明となると、読めない言葉で書かれた本の情報を探すのは至難の業。でも、初めて開く本の中には彼のメモがあったりして、愛おしい。

 

これも、さよならする前に、一冊、一冊にきちんと感謝できるチャンスだと思って、丁寧に作業を進めていきたいな、と思わせてくれている。

 

彼の仕事を支えてくれてありがとう。また誰かの役に立ちますように。