手持ち無沙汰な時、温かいお茶のお供にでもして頂ければ、うれしいです。

春、草木のささやき

春。フランスの田舎。庭付きの小さな一軒家。

そう聞いて皆さんが思い浮かべるのはきっと

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青空に映えるハナカイドウ


や、

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彩とりどりのプリムローズ

や、

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可憐なスミレ

や、

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かわいい水仙

だと思います。

 

きっとそこに住むのは、田舎とは言えおフランスなんだから、ちょっとお洒落で家庭菜園で採れるお野菜やハーブなどを使ったお料理やお茶などを、穏やかに流れる時を知らせる村の教会の鐘をBGMに優雅に楽しむマダム…。

 

しかし、一見そうなれそうな環境に実際身をおく私に言わせると、「そんなん、程遠いワイ!」そう、現実はそう美しくはありません…。

 

以前にも如何に庭仕事が大変かを書きましたが、ガーデナーやまとピース、あの時から全く成長していません。

 

ここに越してきて初めて迎えた春には感動しました。でも、悲しいかな、あの無知な者だけが味わえる新鮮な感動とはもう縁遠くなりました。

 

春先からこの時期の庭の美しさにはもちろん心動かされます。

寒さが少し緩みだす2月半ば、まだ零下を下回り霜が降りる日も多いこのころ、庭では枯葉を押しのけ雪割草が顔を出し始め、恥ずかしそうに頭を垂れた愛らしい白い花がここそこに咲き始めます。そしてしばらくするとクロッカス。こちらも丈は低いですが、日中天気のいい日に少しずつ春の暖かさを恵んでくれる日差しを求めるように空に向かって黄色や薄紫の花を咲かせ始めます。まだ冬枯れで灰色い庭に本格的な春を前に彩が戻ります。そして水仙が芽を吹き始めるのと同時にレンギョウも蕾を付け始め、3月も中旬に差し掛かかると、みるみると日が長くなり、まだ時々冬に戻ったかのような日はあるものの、庭はプリムローズが満開となり、完全に春に衣替え…。おうちの庭で繰り広げられる草花たちの春の訪れを祝う歓喜の競演を観ると多少はウキウキもします。

 

でも、この時期悠長にお庭を鑑賞していると、この後、庭は大変な事になります。

 

4月、タンポポや背丈が低く小さな白い花を小菊が蕾をつけ始める頃から草木がぐんぐん伸び始めます。もうすぐ春風にそよぐツヤツヤの黄色い花をつけるキンポウゲなどの開花を待っていると、悪夢が待っているんです。

 

重くてごつい手押し式の草刈り機にはすぐに長い草が絡んで進まなくなり、主人が「昔はコルホーズで駆り出されて草刈りもしたからお手のもんだ」などと豪語して買い求めた草刈り十字軍的な大きな鎌も、膝丈までに伸びた草に、絡む蔦、そこここに隠れる細いトゲトゲの草木の前では、何の役にも立ちゃぁしない事をよく知っています。

 

そして今年も聞こえ出す囁き声。

「伸びろ伸びろ。腰の重いアイツはまだまだ動き出さないさ。」

「からめ、はびこれ。今のうちに。そしたらアイツはまたギブアップ。」

「ほーら、ほら。あと一息。もう少しで、あの安い草刈り機じゃ、お手上げだ。おれらの天下は近いぞ!」

 

村ではあちこちで、朝9時過ぎからブンブン草刈り機の動く音が響き渡っています。現在朝10時半。気温8度。まだ寒いですが、これから出陣です。

 

皆さま、武運を祈ってください…。

 

Gardens are not made by singing 'Oh, how beautiful,' and sitting in the shade.

「まぁ、何てきれいなの!」と歌い、木陰に座っていては庭はどうにもならない。

-Rudyard Kipling: