手持ち無沙汰な時、温かいお茶のお供にでもして頂ければ、うれしいです。

友達

また一つ、命が途絶えました。

大きな時の流れの中では、生まれる命も消える命も、ただ自然の営みの一部で大した事はないのかもしれません。

現に、彼女が逝ってしまった朝も、紅葉した木々は美しく木枝を揺らし、暖かい太陽の光は変わりなく私たちを照らしていました。人々は道を行き交い、信号は規則正しく順々に色を変え、車の中の私も昨日と同じ様に息をしていました。

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でも彼女を愛した家族は今日も涙にくれ、彼女無しでも容赦なく過ぎていく時間と、何事もなかったかのように語らいあい笑いあう街の人々を恨めしく思い、これからどうやって暮らしていこうかと途方に暮れているのだと思います。

何を言って慰めてあげたらいいのでしょう。まだまだ子供の息子さんにはどんな声を掛けてあげたらいいのでしょう。気の利いた事ぐらい言って少しでも悲しみや痛みを和らげてあげたいけれど、そんな言葉はみつかるわけもありません。

私の母は小学校2年生の時に母親を亡くして、お葬式に集まったご近所さんに「寂しいか?」と聞かれ、「寂しくないとでも思ってんのか!?」と心の中で独りごち、腹が立って思わず舌打ちをしてしまったと言っていました。それが後から父親の耳に入り酷く叱られたとか。

そのご近所さんもきっと、幼い子供に何か言ってやらなければ、という一心で発した言葉だったんだと思いますが、発した言葉は反感を買い、子供心を傷つけてしまった…。

家族の悲しみに追い打ちをかけるような事はしたくないという思いが、さらに口を重くしてしまいます。

亡くなった彼女は特に親しい友達という訳ではありませんでした。でも何度かお茶に呼ばれてお宅にお邪魔しましたし、我が家に来てもらった事もありました。一緒に助け合ってささやかな日本文化イベントも開きました。だけど、彼女との他人行儀で当たり障りのない距離感は縮まる事はなく、いわゆるArm-length、腕を伸ばして体を中心に描く円の内側にはお互いに入る事はありませんでした。

でも、お別れ会に参列した時、彼女がいかに多くの人に惜しまれる存在だったのかが分かりました。そして、同時に、「私がこの世を去る時は、こんなに涙してくれる人はいないな。」という思いが心をよぎりました。

去年、友人のご主人が亡くなった時、友人と4人の子供達は周りのサポートがあって、乗り越えられた。やっぱり、残される家族にとっては、故人が多くの人に慕われていた事を知るだけでも、その人の人生が幸多き物だった事の証となり、慰めになるのだと思いました。

私と私の家がフランスに移住してきて早3年。家族以外で心を許せる様な友人はここにはまだいません…。少しバカで脳天気な私は、現状に満足しやすく、根本的には恵まれていると思っていますし、そのせいで、半引きこもり生活を3年近く続けて、物足りなさは多少感じる事はあっても、幸せだなと感じていました。

でも、こうして、知人の死に際して、改めて考えると、やはり友達って大切だなと思います。

人は数えきれない人のお陰で生きています。でも、実際に会う機会のある人はその中でも縁のある一握りの人だけ。そして出会えた一握りの中で、知人からお互いが友人と思い合える人に巡り合えるのは一体何パーセント位なのでしょうか。

一期一会。一つ一つの出会いを大切にしていかなくては。

 

これまでは、「40過ぎると、そうそう簡単には「いい友達」ってできないよねぇ。」という思い込みがあって、そういう相手を探そうともしていなかったように思います。何よりも、「大人として恥ずかしくない振る舞い」を心がけ、周りに「ウザイ」と思われるような行動は極力慎んで…、という標準的な大人の女性を演じるのに気を遣い過ぎて、友達になるためにどうしても必要な積極的なあと一歩が進みだせずにいたように思います…。

とにかく、ピンとくる素敵な出会いがあったら、勇気を出して、素直な自分、自然な自分を見せてみる事にします。そして、いまある友達も大切にしていきます。

皆さん、最近、ご無沙汰している友達はいませんか?

今日あたり、ちょっと連絡してみませんか。

 

Ne marche pas devant moi, je ne suivrai peut-être pas.
Ne marche pas derrière moi, je ne te guiderai peut-être pas.
Marche juste à côté de moi et sois mon ami.    ~Albert Camus~

 

僕の前を歩かないで。ついては行かないかもしれないから。

僕の後ろを歩かないで。君を導かないかもしれないから。

僕のすぐ隣を歩いて、そして友達でいて。 ~アルベール・カミュ~