虫は好きですか?
私は小さい頃から虫が苦手でした。
虫と言ってすぐに思い出すのは、夏。近くの神社の境内で蝉取りをする子供たち。
網の中で「ジー、ジー」と音を立てて、羽をバタバタさせる様子。
真っ黒い小さな眼が、時々光を反射して白い点が浮かび上がるところ。
子供心に、恐怖を感じていました。
あとは、昆虫の標本作り用の薬品を入れた注射器も覚えています。
誰が持っていたのか、記憶が定かではありませんでしたが、
自分が使うわけでもないのに、何か悪い秘密を見てしまった様な気がしました。
それに追い打ちをかけるように、色んな昆虫に関する情報や映像が、いつの間にか、「今に、立場が逆転する。巨大化した昆虫に襲われる。」、と想像力が暴走し始め、
思春期を迎える頃には、モンシロチョウも嫌いになりました。
でも、大人になって、田舎を離れ、虫と遭遇する事も少なくなり、虫への恐怖心も徐々に薄らいできました。
そして、親になり、子供の可能性がどこにあるか分からない時に、
親の好き嫌いで、子供の興味を制限してはいけないと思い、できるだけ中立の立場をとる努力をしてきました。
「蜘蛛がいる~っ」
『ひぇ~っ、蜘蛛!かなり大きいし…』と思いながらも
「あら、本当。家の中が暖かいから、どこからか入ってきたんだね。逃がしてあげよう。」とできるだけ平静を装って、旦那の所へ助けを求めに行く。
「天井に何かとまってるよ~」
『ひぇ~、あの目の玉のような模様。何とかして~』と思いながらも、
「あら、本当。蛾ね。大丈夫、刺したりしないから。」と、まったく動じていないふりをして、旦那の所へ…。
そうこうするうちに、自分で自分のマインドコントロールに成功したのか、本当にあまり怖くなくなってきました。
そして一昨日。娘が、人生初の遭遇を果たしました。
「ママ~、何かいる~っ!」
「何何?」
「ここ、ここ、見て~!」
「おー、カマキリじゃない。カッコイイね。」
「カッコイイ」。そう、昆虫を前に、旦那にも使わない誉め言葉を使ったのです!
人間、ここまで変われるものかと、我ながらアッパレです。
苦手を克服する事って、案外、不可能じゃないかもしれません。
まずは、克服しなければならない理由を自分に言い聞かせて、
あとは、「だいじょーぶ、だいじょーぶ。落ち着いて、落ち着いて。」と自分に言い聞かせるのです。
すると、あれ不思議、ある日、突然、苦手だったと思っていた物や人の魅力に気が付いた自分を発見し、新しい世界が広がるのでした~。めでたし、めでたし。
でも、やっぱり蛾の羽や腹の模様は、今でもゾゾゾゾゾォォォォ~。
お好きですか?